hanabi わたしは多摩川の近くで育ちました。川っ子の夏は「花火」が恒例の風物詩です。夕食がすんだ頃に遠くで「一番花火」の音が聞こえてくると、家族で川原まで散歩をしました。浴衣を着せてもらい、夏の祭り気分を楽しんだものです。この季節ともなると、多摩川では次々と花火大会が行われます。となり町の世田谷や調布は盛大な花火を上げますが、私の町・狛江の花火はささやかなものです。けれどその「地味」さが市民に愛されて毎年楽しみにされています。わたしもその一人です。

 さて「夏といえば花火」と書きましたが、夏と花火が結びついたのはつい江戸時代からのことでした。
 花火の原型は6世紀ごろの中国で打ち上げた「のろし」だと言われています。緊急用のシンプルな火薬玉でした。やがて火薬がヨーロッパへ渡り、今日のように華やかな花火は13世紀頃のイタリア・フレンツェで誕生したと言われています。日本に渡ってきたのは16世紀、鉄砲や火薬と共に伝えられ「花火人気」は庶民にまで広がります。花火職人は技を競い、人々は喜び、花火は流行の風物詩でした。
 ところが、当時の日本家屋はたいへん燃えやすい「木と和紙」で出来ていましたから「火事」が頻発・・・そこで幕府は「花火は川で行うこと」との御触れを出したそうです。 ところが冬の川では寒すぎる、夏の川原なら大勢で楽しめる。次第に川開きの頃に花火を上げ、皆で楽しむようになりました。大きな川原では茶屋や船宿がにぎわいました。

 事の起源、花の都フィレンツェでは守護聖人の日に毎年花火を上げるそうです・・・こちらもいつかお目にかかりたいと思います。