takigi 

秋の夜露が落ちはじめる頃

都会の夜の公園は 暗く静かに
道端には灯りが設えられ 点の灯りが行く先を誘う
方々から集まる人影は 舞台へ向かって 愉しげに 足早に
御苑の深い森の影 その奥には新宿のビル灯が幻想的にちらつく
幽玄を促す三日月は
これからはじまる舞台に なお一層の思いを高まらせる

一日だけの舞台が成り
大きな楠木は たっぷりのライトアップを受け
秋の夜空に雄大にそびえ 舞台を包む

松明に火がつく 能が始まる

赤い着物は 絹のつや美しく
白は 面と足袋で際立ち 
背の碧と合い深まり 彩色華やかに
松明は静かに燃ゆる

鼓は時を捕え拍子をとり 笛の音は風に乗る
舞の所作は 極めてわずかに
そのわずかな移ろいに 心動く

狂言「清水」 能「紅葉狩」

舞台が終わるとふだんの時間軸に戻り、非日常感に居たことを実感しました。
「薪能」、実に風流な秋の夜長のひと時を愉しみました。
今月に入ってから毎日制作が続いています。
心和みながらも 厳かになる晩でした。