ポーシャ/PORTIA

あなたの目に映っているのがありのままの私です。
私ひとりのためならば、これ以上の私でありたいなどと高望みはしません。
でも、あなたのためなら、
今の百倍もいい人間になりたい、一千倍も美しく、一万倍も裕福でありたい。
そうすれば、美徳も、美しさも、財産も、友人も大きく増すでしょう。
それもこれも、
あなやに高く評価されたいという一心から。
でも、今の私は何もかも合計して高が知れている。
一言で言えば、教養も学問も経験もない小娘です。
ただ幸い、学んで学べないほど歳をとってはいません。
もっと幸いなのは、学んで覚えられないほど愚かに生まれついてもいない。
何より幸いなのは、私の素直な魂をあなたの魂に預け、導いていただけること、
私の主人、支配者、王様に。
私自身も、私が所有するすべても、
いまこうして あなたのものなる。
たった今までは、わたしは美しい館の主、召使いたちの主人、私自信の女王でした。
でも今は、いまからは、
こも家も、召使いたちも、ほかなかぬこの私も、
あなたのもの…私の主のもの…そんすべてに添えてこの指輪も。

もしこれを手放したり、なくしたり、人にやったりなさったら、
それはあなたの愛が滅びる兆し、
私、ここぞとばかりにあなたを避難します。

The Merchant of Venice / William Shakespeare / 1594−1597